「自社サイトの読み込みが遅い気がする…」 「表示速度がSEOに影響すると聞いたけど、何から手をつければいいの?」
Webサイトを運営する上で、多くの担当者が一度は抱えるこの悩み。実は、Webサイトの表示速度は、ユーザーの満足度だけでなく、Googleからの評価、つまりSEOに直接的な影響を与える非常に重要な要素です。
本記事では、SEOの専門家として、なぜサイト表示速度が重要なのか、どうやって測定し、具体的にどう改善すれば良いのかを、初心者の方にも分かりやすく、優先度順に徹底解説します。
1. なぜ今、Webサイトの表示速度がSEOで重要視されるのか?
結論から言うと、表示速度が遅いサイトはユーザーとGoogleの両方から嫌われてしまうからです。その理由は大きく3つあります。
1.1. Googleが掲げる「ユーザーファースト」の理念
Googleが検索順位を決める上で最も大切にしているのは、「ユーザーにとって価値のある情報を提供すること」です。いくら内容が良くても、表示が遅くてユーザーを待たせるサイトは「価値のある体験」を提供しているとは言えません。そのため、Googleは表示速度の速いサイトを高く評価する傾向にあります。
1.2. 表示速度がユーザー体験(UX)に与える致命的な影響
少し想像してみてください。あなたが何かを検索してクリックしたサイトが、いつまで経っても真っ白だったらどうしますか?おそらく、すぐにページを閉じて別のサイトを探すでしょう。
実際に、表示速度とユーザーの行動には明確な関係があります。
▼ページの読み込み時間と直帰率の関係 <br> (グラフのイメージ:横軸に読み込み時間(1秒, 2秒…)、縦軸に直帰率(%)を取り、時間が長くなるほど直帰率が急上昇する右肩上がりのグラフ)
- 1秒 → 3秒 になると、直帰率は 32% 増加
- 1秒 → 5秒 になると、直帰率は 90% 増加
- 1秒 → 10秒 になると、直帰率は 123% 増加
このように、表示速度はユーザーがサイトに留まるかどうかを決定づけるだけでなく、商品の購入や問い合わせといったコンバージョン率(CVR)にも大きく影響するのです。
1.3. SEOへの直接的な影響:Core Web Vitals(コアウェブバイタル)とは
Core Web Vitalsは、Googleがサイトの健全性を示す指標として定めたもので、SEOの評価項目にも含まれています。これは、サイトの「読み込み時間」「インタラクティブ性」「視覚的な安定性」を測る3つの指標で構成されています。
- LCP (Largest Contentful Paint): ページの主要なコンテンツが表示されるまでの時間。**「読み込み速度」**の指標。
- INP (Interaction to Next Paint): ユーザーがクリックなどの操作をしてから、ブラウザが応答するまでの時間。**「応答性」**の指標。(※2024年3月に旧指標FIDから移行)
- CLS (Cumulative Layout Shift): ページの読み込み中にレイアウトがどれだけズレるか。**「視覚的な安定性」**の指標。
これらのスコアが悪いと、Googleから「ユーザー体験の悪いサイト」と判断され、検索順位に悪影響を及ぼす可能性があります。
2. あなたのサイトは大丈夫?表示速度の測定方法と主要ツール
現状を把握しなければ、改善は始まりません。まずはGoogleが無料で提供している「PageSpeed Insights」を使って、自社サイトの健康診断をしてみましょう。
2.1. まずは現状把握から|PageSpeed Insights (PSI)
使い方は簡単です。サイトにアクセスし、測定したいページのURLを入力して「分析」をクリックするだけです。
他にも「GTmetrix」や「Google Chrome デベロッパーツール」などがありますが、まずはPageSpeed Insightsの結果を基準に考えれば問題ありません。
2.2. PageSpeed Insightsのスコアの見方と目標値
分析すると、0点から100点までのスコアが表示されます。
- 「モバイル」と「PC」のタブを必ず確認: 近年、検索の多くはスマートフォンから行われるため、特に**「モバイル」のスコアが重要**です。
- フィールドデータとラボデータの違い:
- フィールドデータ: 実際のユーザー環境から収集された過去のデータ(より現実的)
- ラボデータ: Googleの特定の環境でシミュレーションされたデータ 両方のデータで良好な結果を目指しましょう。
- 目指すべきスコアの目安は? 理想は90点以上ですが、まずはモバイルスコアで50点以上を目標に改善を進めていきましょう。スコア下の「改善できる項目」に、具体的な問題点と解決策のヒントが記載されています。
3. なぜサイトは遅くなる?表示速度を低下させる主な原因
PageSpeed Insightsで指摘される問題の多くは、以下の原因に集約されます。
- 【ファイルサイズ】画像や動画が重すぎる → 高画質な画像をそのままアップロードしている。
- 【リクエスト数】CSSやJavaScriptの読み込みが多い → サイトのデザインや機能のために読み込むファイルが多すぎる。
- 【サーバー】サーバーのスペック不足や応答時間 → 契約しているレンタルサーバーの性能が低い。
- 【その他】リダイレクトの多用、Webフォントの読み込み → ページの表示までに余計な処理が挟まっている。
これらの原因を、次章で紹介する改善策で一つひとつ潰していきましょう。
4. 初心者でもできる!表示速度の具体的な改善策【優先度順】
改善策は数多くありますが、やみくもに着手しても効果は出ません。ここでは、効果が高く、比較的着手しやすい施策から順にご紹介します。
改善施策 | 優先度 | 難易度 | 期待効果 |
画像の最適化 | 高 | 低 | 大 |
ブラウザキャッシュの活用 | 高 | 中 | 大 |
サーバーの応答時間の短縮 | 高 | 中 | 大 |
CSS、JavaScriptの圧縮 | 中 | 中 | 中 |
レンダリングを妨げるリソースの除外 | 中 | 高 | 中 |
CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)の導入 | 低 | 高 | 条件による |
Google スプレッドシートにエクスポート
4.1. 【最優先】画像の最適化
表示速度低下の**最も一般的な原因は「画像」**です。ここを改善するだけで、スコアが劇的に向上することがよくあります。
- 適切なファイル形式を選ぶ:
- WebP(ウェッピー): Googleが開発した次世代フォーマット。高画質・軽量で最も推奨されます。
- JPEG: 写真など、色数が多い画像に適しています。
- PNG: ロゴやイラストなど、背景を透過させたい画像に適しています。
- 画像を圧縮する: アップロード前に、画像圧縮ツールを使ってファイルサイズを小さくしましょう。オンラインで簡単に使える「TinyPNG」などが有名です。
- 遅延読み込み(Lazy Loading)を実装する: ページの表示領域に画像が入るまで読み込みを遅らせる技術です。WordPressでは、標準でこの機能が備わっています。
4.2. ブラウザキャッシュの活用
一度訪れたサイトのデータを、ユーザーのブラウザに一時的に保存させておく仕組みです。これにより、再訪問時の表示が高速になります。
設定にはサーバーの知識が少し必要ですが、契約しているレンタルサーバーの管理画面から簡単に設定できる場合もあります。
4.3. サーバーの応答時間(TTFB)の短縮
サーバーがブラウザからのリクエストに反応するまでの時間です。これが遅い場合、サーバー自体に問題がある可能性があります。
- レンタルサーバーのプランを見直す: 安価すぎる共用サーバーでは、他のサイトの影響を受けて応答が遅くなることがあります。サイトの規模に合ったスペックのプランへのアップグレードを検討しましょう。
- PHPのバージョンをアップする: プログラム言語であるPHPは、バージョンが新しいほど処理速度が速くなります。サーバーの管理画面から最新版に更新できないか確認しましょう。
4.4. CSS、JavaScript、HTMLの圧縮(最小化)
これらのファイルに含まれる不要なスペースやコメントを削除し、ファイルサイズを小さくします。専門知識が必要な場合もありますが、後述するWordPressプラグインを使えば自動で行うことも可能です。
5. 【WordPressユーザー向け】プラグインを活用した簡単高速化
世界で最も利用されているCMSであるWordPressでは、プラグインを導入することで、上記のような改善策を比較的簡単に実装できます。
- 5.1. キャッシュ系プラグイン: ブラウザキャッシュの設定やファイルの圧縮などを自動で行ってくれる統合型のプラグインです。 (例: WP Rocket, W3 Total Cache)
- 5.2. 画像最適化プラグイン: 画像をアップロードする際に、自動で圧縮やWebPへの変換を行ってくれます。 (例: EWWW Image Optimizer, Imagify)
- 5.3. プラグインの入れすぎに注意: 便利だからといってプラグインを多用すると、それ自体がサイトを重くする原因になります。不要なプラグインは停止・削除しましょう。
6. まとめ:サイト表示速度の改善は、継続的な取り組みが重要
この記事では、サイト表示速度がSEOに与える影響から、具体的な測定・改善方法までを解説しました。
- 表示速度はUXとSEOの両方に直結する重要な要素
- まずはPageSpeed Insightsで現状を把握する
- 改善は「画像の最適化」から着手するのが最も効果的
表示速度の改善は、一度行ったら終わりではありません。新しいコンテンツを追加したり、サイトの機能を変更したりする中で、速度は再び低下することがあります。
定期的にサイトの速度をチェックし、改善を続けるサイクルを確立することが大切です。ユーザーにとって快適なサイトを提供し続けることが、本質的なSEO対策であり、Googleからの評価を高める一番の近道なのです。